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インタラクション2024冬「研究者紹介~大型低温重力波望遠鏡KAGRAの万能型研究者、牛場先生~」③

皆さん、こんにちは!

カミオカラボのサイエンスコミュニケーター(SC)、山田です。

今回は前回のKAGRAの研究についてのインタビュー後半です!
重力波研究の今後の目標や現在の重力波観測の結果について詳しく答えていただきました!

SC:重力波観測はどんなことを目標にしているのですか?(れれ)
先生:まず重力波検出器の目標はアインシュタインが予言した重力波の実証だったのですが、それがLIGOで実証できたので、次の目標はまだ観測できていない重力波源からの重力波がいくつかあるのでそれを観測することです。その一つが、超新星爆発からの重力波や電磁パルサーからの重力波(星が回転しているときにそこから出てくる重力波)などを見つけることです。他には、2017年の8月17日の中性子星同士の合体から宇宙の元素合成が進んでいるという証拠が得られたのですが、その合体の頻度が今の宇宙を構成している元素の比率を説明できるくらい頻繁に起こっているかはわかっていないです。その中性子星同士の合体をたくさん見つけてどのくらいの頻度で起こっているのかがわかると宇宙全体にその頻度を拡張すれば、宇宙誕生からこのように星が合体して今の宇宙の元素の比率ができたと説明できます。あるいは説明ができないのであれば、何か別に宇宙を構成する元素を作る物理があるのか、我々が見逃しているイベントがあるのかという話になってくるのでそれを見つけることが目標になります。
SC:実際に観測されてきている重力波の中で中性子星同士の合体はブラックホール同士の合体と比べて頻度は予想と違いはあったのでしょうか?(SC)
先生:割合的には中性子星同士の合体に比べてブラックホール同士の合体の方が圧倒的に多く見つかっています。中性子星同士が合体したうえでその合体したものを電磁波望遠鏡で一緒に観測できると一番面白いのですが、それはなかなか難しいです。なぜかというと重力波検出器は重力波がどこから来たのか判定するのが苦手だからです。どのように方向を特定するかというと、多数の離れた地点にある検出器に重力波が届いた時間の時間差で三角測量をするという方法で特定するのですが、O4a(重力波望遠鏡が稼働している観測期間のこと)の期間中にLIGO二台は動いていたのですが、Virgoは動いてなくてKAGRAは動いていたのですがまだ感度が足りなかったのでLIGO二台で観測していたので三角測量ができませんでした。そうすると重力波が来た方向はこの辺というような広い範囲になってしまいます。そして、電磁波望遠鏡は遠くを見ようとすればするほど視野が狭くなるので、その範囲全部を見るのにすごく時間がかかってしまうので重力波検出器と電磁波望遠鏡で一緒に観測することは難しかったです。なので、LIGO二台とVirgoとKAGRAが重力波を見つける感度になって方向を絞れるようになって、電磁波望遠鏡がそこに向けられるようになればより研究が進むと思います。
そして、中性子星同士の合体はもう少し多く見つかるのかなと思っていたのですが、予想より少ないというのが現状だと思います。中性子星同士の合体がどのくらい宇宙で起こっているかという事を計算するときにどうするかというと我々の銀河内に中性子星同士がお互いの周りをまわっている状態が何個あるか見つけて一つの銀河でそのくらいの個数があるとすると全天で平均すると何個ぐらいか予想できます。そこから重力波望遠鏡で見える範囲に何個あるかという事をやっています。我々の銀河の中に中性子星同士が連星を組んでいる系というものがそもそも数個しかないので不確定性が非常に大きくて、LIGOが達成している感度(100Mpc)くらいで年間に10個オーダーで観測できるか下手すると数個しか見つからない、ばらつきがある予想ですけど現状は下振れしているという結果ですね。
SC:ブラックホールが予想より多かったという事なのですか?(SC)
先生:そうですね、そもそもブラックホールの連星が合体するという現象が見つかる頻度であるのか、予想もできなかったです。それが起これば重力波で見つかるのでしょうけど、それをターゲットにして検出器を作ろうとしたわけではなかったので、1番最初に見つかったのがブラックホール同士の合体というのは我々も驚きました。そのあと観測を続けたらどんどんブラックホール同士の合体が見つかって、「ブラックホールこんなに多いんだ・・・」という感じでした。
SC:最初の予想ではどんな重力波が最初に来ると考えていたのですか?
先生:やっぱり中性子星の連星はこの宇宙に存在していることがわかっていたので、それの合体は見られるだろうと思っていました。それを見ようとして検出器が作られていたので見られると期待していたし、もちろん見られたのですが、それより先にブラックホール連星が観測できて、しかもそれが特別とかではなくてどんどんブラックホール連星が見つかったという感じですね。

SC:今後、重力波研究が日常生活に役立つことはありますか?(ビッグバン)
先生:重力波を見つけたことが役立つかというと難しい話ですけど、重力波検出のための技術は本当に世界最先端の技術が投入されていて、検出器の感度を上げることは世界最先端の技術を1歩先に進めるという事です。重力波研究のための非常に強いパワーで安定させたレーザー光源の開発とか、そういった産業的な技術を発展させるモチベーションの一つにはなっているのかなとは思います。重力波を見つけるために磨かれた技術が今後一般の人のところでも役に立つことが来るのではないかと思います。

東京大学宇宙線研究所 重力波観測研究施設
東京大学宇宙線研究所 重力波観測研究施設 
KAGRA コントロールルーム

今回はKAGRAの研究についてのインタビュー後半でした。
中性子星連星の合体を観測するために作られた重力波望遠鏡は研究者の予想以上にブラックホール連星の合体を発見したという部分が観測によって宇宙の姿が見えてくる感じがして個人的に印象的でした!
それと超新星爆発からの重力波観測が今後とても楽しみです!

次回は能登半島地震の影響についてのインタビュー内容です。
是非ともご覧ください。

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