なぜ 神岡鉱山なの
こんにちは。今回は古宿が担当します。「スーパーカミオカンデが神岡鉱山内に造られた理由は」。来館者の方々からのよくある質問ですが、カミオカラボのスーパーカミオカンデ模型展示コーナーの掲示板には、『カミオカンデおよびスーパーカミオカンデの建設地として、宇宙線の影響を減らせる地下1000mに巨大空間を掘削でき、雪解けの水が豊富にあり、優れた掘削技術を持つ企業(神岡鉱業)が操業しているこの場所が選ばれました。』と書かれています。
少し補足しますと、カミオカンデは1983年に建設された初代の実験施設。宇宙線は主にミューオンで、空間の大きさは直径40m、高さ58m。神岡鉱山は飛騨片麻岩という非常に硬い岩石で構成されているため、山の中にこのような巨大空間の掘削が可能となりました。
私たちスタッフもこのように説明いたしますと、たいていは納得していただけるのですが、中には上記の公式回答に飽き足らず、「深い地下であればいいのでしょう。だったら、他にもっと適地があったのでは」と鋭く突っ込んでこられる方もおられます。
そこで再び、「なぜ、神岡鉱山なのか」。実はもっと単純な理由があるのです。東京大の小柴昌俊先生と共にカミオカンデの建設に関わった戸塚洋二先生が、自身の著書の中で裏話を披露されています。それによると、当時、実験施設には複数の候補地があり、東北の釜石鉱山が最有力とされていたそうです。2番目が岐阜・長野両県の木曽山脈を貫く恵那山トンネルの調査坑、そして3番目が神岡鉱山だった。釜石と恵那山トンネルは権利者側の了解を得られなかったが、神岡鉱山だけは地元の責任者がダメだとは言わなかった。それで奥飛騨の神岡鉱山にできたというわけです。
飛騨市に複数のノーベル賞を生んだ世界的な素粒子実験施設があることは地域住民にとって大きな誇りですが、神岡鉱業の度量の大きさというか、先見の明にも大きな拍手を送りたいものです。