インタラクション2024夏「研究者紹介~東北大学ニュートリノ科学研究センターカムランドの新世代研究者、畑和実先生~」前半
みなさん、こんにちは!
ひだ宇宙科学館カミオカラボのサイエンスコミュニケーターの山田です。
今回の記事はインタラクションの研究者紹介の企画第三弾、東北大学ニュートリノ科学研究センターカムランドの特任助教、畑和実先生の紹介です。
畑先生は京都府出身の29歳、趣味は音楽鑑賞と散歩だそうです。
畑先生にはカミオカラボの来館者から募集したカムランドについての質問に答えていただきましたので、前半と後半の2回に分けて投稿します!
~カムランドの説明~
カムランドの名前の由来は神岡液体シンチレーター反ニュートリノ検出(The Kamioka Liquid-scintillator Anti-Neutrino Detector)の太字部分を取ってKamLANDです。
カムランドは神岡鉱山の地下1000mにある1000トンの液体シンチレーターを使った反ニュートリノ検出器です。
液体シンチレーターとは高エネルギーの荷電粒子と反応することで蛍光発光する油をベースにした液体です。
この液体シンチレーターの中にある陽子と反電子ニュートリノが反応することで発生する荷電粒子が放出する光を観測することで反電子ニュートリノを観測しています。
この検出器を使って、素粒子や物質優勢宇宙の起源の謎を解明しようと取り組んでいます。
それでは、さっそくインタビュー前半の内容に入ります!
Q1:カムランドで行われている研究は成果が出たらノーベル賞はとれそうですか?(質問者:さかな)
先生:ノーベル賞に選ばれる基準が明確ではないので、取れるかどうかはわからないですが、もしカムランドでニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊を見つけられると、ニュートリノのマヨラナ性を実験で初めて示唆したことになり、物理学を変える大きな発見になります。
Q2:いつから、どのようなきっかけで研究者になろうと思ったのですか?(質問者:Y)
先生:高校2年生の時にふたご座流星群をみて、それまで漠然としか意識してこなかった宇宙というものを身近に感じ、同時にまだまだ未知である宇宙に対して興味を持ちました。幼少期から「なぜ自分が存在するのか」と疑問に思うことがよくあったのですが、宇宙がなぜ始まり、なぜ今ある状態でそこに存在するのか」という、まだ誰もよく理解していないものを解明して、幼少期からの自分の疑問への答えに近づきたいと思ったのが研究者を志したきっかけです。
Q3:ニュートリノの解明によって、人類にはどのような恩恵があるのでしょうか?(質問者:鈴子)
先生:人類の生活にはどのように活かせるのかはまだわかりません。ただ、近い分野ですとニュートリノと同じく素粒子である電子は電化製品に、放射線は医療など様々なところで利用されています。これらはその性質をきちんと調べられてきたからこそ、今日皆さんは安全に利用することができています。ニュートリノについても、その性質をしっかりと理解し、応用への研究につなげることができれば、利用できる可能性はあると思います。
Q4:物理学に興味を持ったきっかけは何ですか?(質問者:ゆうこ)
先生:高校1年生の冬に、理科の選択科目で生物か物理かを選択する必要あり、そこで初めて物理学を意識しました。その時に、母親に本屋さんに行って参考書を眺めて直感で決めたら?と言われ、パラパラと眺めたのですが、自分を含む生き物の体内で起こっていることよりも目の前で起こっている自然会の摂理の方がより知りたいと直感的に思い、物理学に興味を持ちました。
Q5:重いニュートリノはありそうですか?研究者の方のっ最新の見解を知りたいです。(質問者:理学部生A)
先生:実験的に重いニュートリノがありそうな兆候報告されていません。カムランドの研究に関する重いニュートリノですと、ニュートリノがなぜほかの素粒子と比べて極端に軽いのかを説明する理論「シーソー機構」に登場する重い右巻きニュートリノがあります。この理論では、ニュートリノがマヨラナ性を持つことを要求します。よって、もしニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊が見つかれば、ニュートリノにマヨラナ性の存在を示唆するものとなるので、シーソー機構や重い右巻きニュートリノが存在する可能性を高める結果になると思います。しかし、カムランドでもそのような兆候は見られていません。
今回の東北大学ニュートリノ科学研究センターの畑先生のインタビュー前半は以上です!
次回の後半もぜひご覧ください!