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インタラクション2023秋「研究者紹介~スーパーカミオカンデのスーパー研究者関谷先生~」①

皆さん、はじめまして!

ひだ宇宙科学館カミオカラボのサイエンスコミュニケーター(SC)の山田と申します。
Noteの投稿は初なので簡単に自己紹介をします。
静岡県出身、特技はジャグリング、大学では宇宙線(空気シャワー)の研究をしていました。
今後ともよろしくお願いいたします。

今回の記事はカミオカラボ発行情報誌インタラクションの企画で飛騨市神岡町にある最先端の宇宙物理学研究施設スーパーカミオカンデの研究者を取材しましたので、そのインタビュー内容を掲載します。
インタビューの際の質問は来館者やSNS、飛騨市内の高校で募集した中から私が厳選して研究者の方に質問させていただきました。

この記事を読んだ方に「どんな人が宇宙の研究をしているのか」について知っていただくことで、宇宙物理学の研究に少しでも興味・関心を持っていただけたら幸いです。

かなりのロングインタビューなので全4回に分けて投稿します。
① 研究者についての質問
② ニュートリノについての質問
③ 研究についての質問
④ 研究とは直接関係ない質問

今回は第1回目の研究者についての質問です。
前置きが長くなりましたが、それでは早速研究者の方を紹介します!

今回、取材させていただいたのはノーベル賞で有名な世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置、スーパーカミオカンデで研究をしている東京大学宇宙線研究所の関谷洋之准教授です。関谷先生は神奈川県出身の46歳、趣味はもの作りだそうです。

東京大学宇宙線研究所 関谷洋之准教授

まずは研究者に関することを質問しました。

Q いつから、どのようなきっかけで研究者になろうと思いましたか?(質問者:Haruki、アライ、も)
A 中高からサイエンスには興味があり、大学と大学院に行って研究者としてやっていけると思ったら研究者になるのだと思います。個人の話としては中学から物理部に所属していて中学の時の物理の先生が個性的で変な人だけど面白いと思い物理に興味を持ちました。そして大学で物理を勉強しているときにダークマターを研究している先生と出会って研究者に興味を持ちました。

Q それぞれどんな先生でしたか?(質問者:SC)
A 中学の物理の先生はめちゃくちゃで授業では何が正解で何が嘘かわからないような授業をする先生でした。例えば、石油ストーブは2階に持っていったら位置エネルギーが上がるから効率がいいとか嘘かほんとかよくわからないことを言ったまま授業が終わるんですよ。疑問を残されて絶対おかしいと思うのですが、どうやってそれがおかしいかはしっかり考えないといけなくてそんなことばかりやっている先生でした。でも期末試験はめちゃくちゃ難しくてオームの法則しか習っていないのにキルヒホッフの連立方程式を使わないと絶対解けない回路図とか出てきて100点満点のテストでみんな10点しか取れないようなテストを出す先生でした。
 ダークマターの先生は我が道を行く先生で本当に自分の好きなことをやっている方でした。今ではほとんどの人がダークマターの研究をしていますが、2,30年前は物理学会でもダークマターの話題は1個か2個しかなくて、しかもゲテモノ扱いだったんですよ。でもそれを真剣にやるというところがほかの研究者とは明らかに違いました。もちろんダークマターは現在でも見つかっていないですし、すぐに成果が出るものじゃないですけど嬉々としてやっていてすごいなと思いました。それで修士に行って就職活動をしましたが、ダークマターの研究をするのだったら研究者になってもいいかなと。普通に就職活動をして内定まで取って博士に行くか就職するかギリギリまで悩みましたが、内定した会社訪問に行って会社の人から「(就職するのが)もったいないと思うよ」と言われて、会社の人からそういわれるのなら研究者になった方がいいのかなって思いました。最終的には就職活動したうえで研究者になる方が人生面白いと思ったからですかね。

Q 勉強は好きでしたか?(質問者:りんご)
A 数学は特に好きというわけではなく、むしろ嫌いでした。社会の歴史とか好きで学んで新たな知識を得るのは好きでした。そういう観点では理科とか物理も好きだったと思うし、古文漢文も文法を知ると昔の文章を読めるとか学ぶのが好きだったけど数学だけは興味を持てなかったです。だから僕をインタビューするのははずれかも(笑)。物理をやっていくうえで数学がツールとして必要だから甘んじて受け入れて、社会とか理科程の面白さは感じなかったです。

Q 研究者になる前に先生が持っていた宇宙研究のイメージと実際の宇宙研究は違いましたか?(質問者:ゆう)
A 中学や高校でイメージしていたのは数学を使って宇宙の方程式を解くとか一般的なイメージを持っていました。でも大学に入って実際に研究室に所属したらほとんど泥臭いことしかしなかったです。数学を使うのはデータを取って解析の本当に最後で、ほとんどの時間は手を動かしてものを作っています。もともと数学には興味を持てませんでしたが、実験の物理をすごく面白いなと思いました。

Q 物作りがすきなんですか?(質問者SC)
A 物を作るのは好きでした。中高の物理部では電子工作とかプログラミングでゲームを作るだとかやっていたので、ハードもソフトも作るのは好きでした。

Q 研究をしている中で一番興味深かったこと、一番興奮したことはなんですか?(はははははは、さな)
A 元々ダークマターの研究をしていてダークマターはまだ発見には至っていませんが、神岡に来てからニュートリノの研究をやり始めて、はじめてニュートリノの信号を見たときに実験で目に見えないものの物理現象捉えた感覚があり、エキサイティングでした。具体的には太陽ニュートリノをとらえた時で、スーパーカミオカンデでは太陽の方向とは逆方向にニュートリノのイベントが来るのですが、横軸を太陽の方向で縦軸をイベント数にすると太陽の方向にきれいにピークが見えて「本当に太陽からニュートリノがやってきてそれをとらえたプロットがあるんだ」というのが今まで暗黒物質という捉えられないものをやってきたからこそエキサイティングで初めて物理をやっている実感をしました。それと元々ダークマター研究の技術的な部分はニュートリノ研究にも活かせるのが面白かったです。ニュートリノとダークマターはどちらもノイズに埋もれていてバックグラウンドをいかに避けるかという点ではダークマターの方が難しいので、それまで蓄積していた様々な技術をニュートリノに適応することができました。

Q 予想(期待)したデータが出てくれないときどうやって気持ちを切り替えたり、やる気を出していますか?(倉内)
A 初めから一発で上手くいくとは思っていなくて、すごく四苦八苦した挙句にじゃないとデータが出ないと初めから思っているから切り替えているとかではないです。

ここまでご覧いただきましてありがとうございました!
今回は研究者についての質問と回答を投稿しました。
次回は関谷先生にニュートリノに関する質問をしたのでその回答を投稿します。

次回の投稿もぜひご覧ください!