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過去のノーベル物理学賞発表時の「実演」を振り返ってみた!

ニュートリノ!サイエンスコミュニケーターの高知尾です。

10月6日、今年もノーベル物理学賞の発表が行われました。

今年のテーマはブラックホール。
賞金の半分が授与されることとなったロジャー・ペンローズ博士は、「一般相対性理論からブラックホールが形成されることを理論的に証明」したことにより受賞。残りの半分はラインハルト・ゲンツェル博士とアンドレア・ゲズ博士が分け合う形となり、「私たちが住む天の川銀河の中心に重くて小さい天体(のちにブラックホールと判明)があることを観測的に発見」したことが評価されました。

二年連続での宇宙分野からの受賞は驚きましたが、確かに当該分野の発展は近年目覚ましいものがあります。

2019年には国際プロジェクトのイベント・ホライズン・テレスコープがM87銀河の中心にある超大質量ブラックホールの影を撮影することに初成功し、ブラックホールは私たちのより身近なものとなりました。

また、2015年から可能になった重力波観測でもブラックホールの形成プロセス(2つのブラックホールが合体する様子など)がわかるようになってきました。

目に見えないものの代名詞だったブラックホールが観測される対象へと時代が移行したということで、改めてその正体を数学で記述したペンローズ博士と観測時代へと移行するきかっけを作ったゲンツェル博士、ゲズ博士が評価されたという面もあるかもしれません。

三博士、受賞おめでとうございます。

さて、サイエンスコミュニケーターとしては物理学賞の発表の際に毎回楽しみにしていることがあります。

それは、発表後の解説時に委員会のメンバーが行う実演(デモンストレーション)です。プレゼンスライドを使った説明だと難解になりすぎる部分を伝えたり、より印象的にわかりやすく伝えようとするプレゼンターの工夫や想いが伝わってきます。

化学賞等でも行われることがありますが、特に物理学賞では恒例(毎回ではない)となっています。

今年は、ブラックホールの性質を表現するためにグレープフルーツ大の黒いボールを使用していました。そこでプレゼンターは、ふいに”ブラックホール”に指を突っ込みます(動画で見るとちょっと不思議です)。

"ブラックホール"に指を突っ込むと指の先端は未来に行ってしまい、千切れることなく引き抜くことは不可能だと言うのです(幸いなことにプレゼンターの指は無事に戻ってきました)。

また、ブラックホール自体は見えませんが、そのまわりを回る光る天体の運動は見ることができます。この動きを詳細に観察することで中心天体の大きさや重さが推測できるという説明でした。これこそが、ゲンツェル博士とゲズ博士が行った手法です。

詳しくはノーベル財団の動画を御覧ください(実演は10:26くらいから)。

このように、目に見えない世界を身近なものを使って例えることは物理の世界ではよく行われることです。僕も指が入るブラックホールを探しに早速ホームセンターに走りたいと思います。

ざっと、近年の受賞テーマと実演内容を振り返って見るとこんな感じです。

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実演を行うかどうかはプレゼンター次第のようですが、素粒子系での実演が少ないのはやはり表現が難しい分野ということもあるかもしれません。

2012年までの様子はYouTubeでもご覧いただけるので、よろしければ過去の実演の様子も覗いてみてください(但し、英語です)。

注:2011年以前もノーベル財団の公式ページではチェックできます。