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HK計画 市民向け講演会より

 こんにちは、スタッフの古宿です。今回は、先月21日に神岡町内で開催された塩澤眞人東大宇宙線研究所教授の講演会「ハイパーカミオカンデ計画~ニュートリノ研究の次なる挑戦~」について書きたいと思います。ハイパーカミオカンデ(以下HKと記す)はご承知の通り、現在、稼働しているスーパーカミオカンデ(以下SKと記す)よりもさらに巨大な実験施設です。建設場所はSKから南に約8㌔の神岡鉱業栃洞鉱山内。7年後の実験開始に向けて、本年度から建設が進められています。
 

 講演会は飛騨市民向けのものでしたが、講師の塩澤先生がHKプロジェクトの代表であり、総工費も650億円という巨額なことなどから住民の関心は高く、ほぼ定員いっぱいの約150人が参加しました。
 塩澤先生の講演で興味深かったのは、HKの研究テーマが実に多岐にわたっていることでした。以下レジメで紹介しますと
  ●非常に小さい質量を持つニュートリノの理解は、宇宙の物質の起源に深く関わっていると考えられている。そこで、茨城県東海村のJ-PARCでニュートリノ及び反ニュートリノのビームを生成し、そのニュートリノの振動を295㌔先のHKで観測し、ニュートリノと反ニュートリノのニュートリノ振動が同じであるか否か(CP非保存)を検証して宇宙の物質の起源の謎に迫る。
 ●陽子崩壊を発見し、物質素粒子(電子やクオーク)の統一と素粒子間に働く3つの力の統一を実証する。
 ●太陽ニュートリノや大気ニュートリノを観測して、ニュートリノ振動の研究をさらに進める。
 ●超新星爆発に伴う大量のニュートリノを観測し、重力波観測とも連携して、超新星爆発のメカニズムの解明を行う。
 ●銀河宇宙形成以来起こっている超新星爆発に伴うニュートリノを観測し、超新星爆発の歴史を解明する。
 ●その他

 宇宙誕生時に同数あったとされる物質と反物質のうち、物質だけが残ったのはなぜなのか? ニュートリノがそのこと(CP対称性の破れ)に重要な役割を果たしている可能性があり、HKの実験でそれが解明されたとしたらどんなにすごいことだろうと今からワクワクします。
 さらに、陽子崩壊の発見も初代カミオカンデから営々と挑戦が続けられている最大のテーマです。素粒子間に働く3つの力(弱い力、電磁気力、強い力)の統一はこれまで科学雑誌などを読み、多少は知っているつもりでしたが、素粒子は統一されるのか?について、塩澤先生は「現在、物質素粒子はクオークとレプトン(電子やニュートリノなど)に分けて考えられているが、積み木のブロックを上下左右から眺めると違って見えるように、実はもともと同一のブロックなのかもしれない」とお話しされました。積み木ブロックのイメージがとても斬新で、素人ながら素粒子物理学がますます面白くなりました。