お寄せいただいた質問と回答 パート3
【2019年6月24日にブログに掲載した記事をnoteに転載しました】
ニュートリノ感じてますか?
こんにちは。サイエンスコミュニケーターの高知尾です。
頂いた質問への回答パート3、行きたいと思います。
(これまでの回答はパート1とパート2をご覧ください。)
前回に引き続き、ニュートリノに関する質問です。
気楽な気持ちでご覧ください。
質問1
ニュートリノを飼いたいです。どうしたら飼えますか?
(ペンネーム タウさんより)
回答
ニュートリノはあまり手の掛からない粒子です。ほかっといても勝手に飛び続けますし、とても長生きします。でもその分、構ってくれないので少し寂しいかもしれません。
そんな時は、今この瞬間に太陽の中心で核融合によって生まれたニュートリノを一つ想像して名前をつけてみてください。
「リノちゃん」でも良いし、「つぶ1号」でも良いです。
あまり悩まないでください。
それから、ぜひ地球に向かってくるニュートリノを選んであげてくださいね。
そうすると、およそ8分20秒後に地球までやってきます。
生まれたばかりなのに、ほぼ光と同じくらいの高速です。
もしかしたら、途中で違う種類のニュートリノに変わってしまって見逃してしまうかもしれないので注意してください。自分の決めた子だから大丈夫でしょう。
ちょうど8分20秒経ったら間髪入れずに声をかけてあげてください。
「こんにちは」
「さようなら。」
質問2
スーパーカミオカンデで捉えたニュートリノはその後、どうなるのですか?
(ペンネーム まゆみわさん、108さん他)
回答
ニュートリノのその後について、多くの方からご質問をいただきました。ニュートリノは、スーパーカミオカンデの中で水の粒とぶつかることで光を出します。ニュートリノを捉えた瞬間です。この時、ニュートリノの飛んでくる速さの違いなどによってどんな反応をするかが変わってきます。
下に、その中の2例を示します。
1つ目の反応では、水の原子を構成する電子にぶつかっています。弾き飛ばされた電子は高速で走ってチェレンコフ光という光を出して、光電子増倍管によって観測されます。このような際は、電子とぶつかったニュートリノは速度を弱めて飛び続けることになります。
例えば、太陽から飛んできたニュートリノは速度が遅くこのような反応を示します。
2つ目の反応では、水の原子を構成する中性子にぶつかって陽子と電子を新たに生み出しています。この場合もチェレンコフ光を出すのは電子です。一方、ニュートリノは中性子との反応により、他の種類の粒子に変わってしまったと考えることができます。地球を取り巻く大気で生まれたニュートリノはとても大きな速度を持っており、このような反応をします。
つまり、ニュートリノがスーパーカミオカンデの中で反応すると、そのまま飛び続けることもあれば、別の種類の粒子に変わってしまうこともあるということになります。
質問3
私がニュートリノの大きさになったらなんでも通り抜けられますか?
(ペンネーム カオリーヌさんより)
回答
これは、なかなか難しい問題です。
ニュートリノは素粒子です。素粒子は物質を構成する最小単位なので大きさを持たないとする考え方もありますが、ここでは他の粒子と反応する距離をニュートリノの半径としましょう。これは例えば電子に向けてニュートリノを飛ばしてみたときに、ニュートリノが電子と反応するくらい近くを飛んだ時の電子とニュートリノの間の距離を大きさとして定義する方法です。その大きさは、人間の身長の1億分の1の1億分の1の、さらに1億分の1くらいです。
ものすごく小さいですね。
そして、なんだかややこしくなってきましたね!
さて、仮にこれくらいの大きさにまで人間を縮めてみるとします。粒子を間引いていってもいつかは限界がくるので、粒子自体を小さくしたり、粒子と粒子の間に働く力も近距離になるように手を加えていくなど物理学的にはあり得ないことを考えなければならないかもしれません。そこまでしても、人間を構成する粒子がニュートリノでは持っていない電磁気力を拠り所にしている限りは、この電磁気力が外部と反応し、貫通を妨げてしまいます。身近な素粒子である電子は、この電磁気力のおかげであまり深くまで入り込んでいくことができません。
さらに、ややこしくなってきましたね!!
もっとシンプルに考えてみた方が良いかもしれません。カオリーヌさん自身がニュートリノになってみると仮定したらどうでしょう。
そうすれば、ニュートリノなので何でも突き抜けていくでしょう。
あれ?でもそうすると、ニュートリノに扮したカオリーヌさんは意識を持っていると言えるのでしょうか?
それはもう、ニュートリノであってカオリーヌさんではないのでは……!
今回はこの辺で!