お寄せいただいた質問と回答 パート1
【2019年5月8日にブログ掲載した記事をnoteに転載します。】
こんにちは。連日登場のサイエンスコミュニケーター高知尾です。
みなさんは、この用紙はご存知でしょうか?
これは館内を回っている際に疑問に思ったことを書いて投函することのできる「質問用紙」で、カミオカラボの館内に備え付けられています。
これまでに多くのご質問を頂き、その一部はすでに館内の掲示板にも掲示してあります。
さて、先ほどの用紙の真ん中の文章はお気づきになったでしょうか?
ニュートリノくんのコメント
そうです。ニュートリノくん(さん?)が言ってくれちゃったからには、ホームページ上でも回答しないわけにはいきません(汗)。
というわけで、今回はたくさんのご質問の中から3つにお答えします。
質問1
カミオカンデの「ンデ」にはどういう意味があるのですか?
(ペンネーム おきょうさんより)
回答
カミオカンデはもともと「陽子崩壊」という水を構成する陽子が長い年月をかけて壊れてしまう現象の初観測を目指してつくられました。そこで、頭文字をとってKamioka Nucleon Decay Experiment(神岡核子崩壊実験)と名付けられました。
その後、ニュートリノの検出にも威力を発揮することが示されたため、後継機のスーパーカミオカンデはSuper Kamioka Neutrino Detection Experiment(神岡ニュートリノ検出実験)という意味も込めて名付けられたそうです。
質問2
ニュートリノは何でつくられているのですか?
(ペンネーム 露里さんより)
回答
下の「何からつくられているかマップ」をご覧ください。
※陽子、中性子は省略してあります。
これをニュートリノは一番小さい世界の住人ということになり、それ以上細かくは(少なくても今の科学では)分けることができません。このような粒子を「素粒子」といい、現在17種類の素粒子が見つかっています。
そのため、ニュートリノはこの宇宙を構成する根本的な粒子のひとつということになり、宇宙を解き明かすための重要なキーパーソンとなるのです。
質問3
エジプトのピラミッドの透視に利用されたミューオンとニュートリノの関係は何ですか?
(ペンネーム 紙を噛んでさんより)
回答
どちらも宇宙から降り注ぐ粒子です(ここでの「宇宙」は大気や太陽も含む)。
ミューオンは、1秒間に約1個、手のひらを通り抜けています。一方、ニュートリノは手のひらをなんと1秒間に約8兆個も通り抜けています!気づきましたか!?
もうひとつ際立った違いがあります。それは、透過力の高さです。ミューオンは、おおよそ数kmの岩盤によって止めることができます。そこで、これを使った技術が「ミュオグラフィ」です。
ここに、岩かコンクリートでできた直径100mの巨大な構造物があったとしましょう。この巨大構造物の中に人間が入ることはいろいろな都合でできません。このとき、宇宙から降り注ぐミューオンがこの巨大構造物をどれだけ通り抜けたかを測定してみると、物質が密に詰まっているところはミューオンを止めてしまうので、通り抜ける量は少ないはずです。一方、すかすかな部分はミューオンが遮られずに通り抜けるので多く観測されるはずです。この違いから、巨大構造物の中身を透視することができます。この技術はすでに、ピラミッドや火山の透視等に活用されています。
一方、ニュートリノは数光年の厚さの鉛でようやく止めることができます。
だから、ニュートリノさんは何でも通り抜ける幽霊のような姿をしていたのですね。
いかがでしたか?今回はこの辺で。
次回もお楽しみに!