オンラインイベントに欲しいのは「臨場感」「主体性」「偶然性」、それから?
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オンラインイベントに欲しいのは「臨場感」「主体性」「偶然性」、それから?

 ニュートリノ!サイエンスコミュニケーターの高知尾です。

 先日、とある団体さんとのご縁からカミオカラボのオンラインツアーをZoomで開催し、100名近くの方にご参加頂きました。

 今回は実施をしてみて感じたこと、これからの課題を記しておこうと思います。

 現在は新型コロナウィルスの影響で世界的にリアルイベントが制限されている状況ですが、イベントコミュニティサイト「Peatix」の調査によると「今後、リアルイベントが以前と同じように開催可能になった場合もオンラインイベントを並行して行う」と答えた主催者が71%にも上るそうです。つまり、オンラインイベントがひとつの文化として定着しつつあり、今後も満足度向上のための試みが求められると言えそうです。

 オンラインイベントの満足度を向上させるために必要な要素は何でしょうか?これまでに私が見聞きした中で最も参考になったのは、日本科学未来館が開催した研究エリア公開ミーティング vol.1 「どうしたらオンラインでの体験にもっと満足できるのだろう?」というオンラインイベントでした。

 このときの議論を自分なりに解釈すると、3つの要素に集約できました。それは「臨場感」「主体性」、そして「偶然性」です。

臨場感

 自分がその現場に実際にいるかのような感覚を引き起こす五感刺激をどう与えるか。現在普及している技術としては五感のうち「視覚」と「聴覚」が現実的でしょう。今回のツアーでは、バスで鉱山に向かうまでの車窓の風景動画を事前に撮影して流したり、解説役を一人称視点のカメラワークで追いかけたりしました。参加者からも一定の評価を頂きましたが、ここからさらに臨場感を向上させるにはどうすればよいでしょうか。現場をより忠実に再現する工夫や、カメラワークの精度なんかも大事になってきそうです。また、この項目は参加者の受信環境に左右されるというのも難しい点です。

主体性

 通常のリアルツアーでは参加者は見たいものを自由に選択できます。ツアーガイドが先に進んだけど、ちょっと気になった展示があったので集団から離脱してじっくり見るといったこともできるでしょう。ところがオンラインツアーではカメラの画角の都合上、全員が同じ方向、同じ角度の画面を見ることを強いられます。技術的には360度映像などをうまく取り込んでいくことも有効でしょう。
 今回のツアーでは、参加者の主体性を上げる試みとして質問を受けるための時間を設定しました。参加者にとって質問をすることは主体的なアプローチです。実は、オンラインチャットで質問を受け付けるとリアルの場合と比べて効率的です。質問者にマイクを持っていく時間などを省くことができるからです。また、質問者が周囲に注目されることも無いので、質問のハードルを下げる効果もあります。この点はオンラインイベントならではのメリットと言えるでしょう。質問タイムを活発化させるには、事前に関連するYouTube動画などを見て頂いて、各々で問いを持ち込んでもらうのも一つの手でしょう。
 他に手軽にできることとしては、展示にまつわるクイズを出題してみるというのも良いかもしれません。

偶然性

 個人的にはこれが最も興味がある項目です。リアルなイベントでは、例えば隣の席の人の質問に興味があったのでイベント後に話しかけたら意気投合したとか、休憩時間に友人と駄弁っていたら予期せぬ論点を見つけたとか、会場のチラシラックに入っていたチラシを見たら知人が出演していたとかいったことが起こります。これらは、主催者側が意図せずに生まれた極めてパーソナルな価値です。実はこの出会いこそが、その人のその後の人生に最も影響するのではないかとも思っています。
 この偶然性を創出するためには情報の多層化が必要です。なぜなら参加者ひとりひとりが偶然を受け取るアンテナのチャンネルが異なるからです。ところが、オンラインツールでは情報を効率的にやり取りできる一方で、そうしたノイズが削ぎ落とされてしまっています。
 Zoomのブレイクアウトルームを活用した少人数での議論はその突破口を与えてくれる可能性がありますが、それでも主催者にコントロールされている感や会話だけから偶然性を見つけ出すことへの限界も感じます。
 唯一言えるのは、参加者が主観的解釈で自分の体験と結びつけることのできる何かしらの「ゆとり」が必要になってくるのではないかなということです。

その他のヒント

 さて、ここまでは科学館のツアーのような「情報提供型のイベント」に焦点を当てて3点挙げましたが、よりエンタメ性の強いイベントであればまた別の要素も大事になってきそうです。例えば…

身体性
 表情や身体を動かしたり、またそのサインを受け取ること、もしくは仮想空間で擬似的に他者と身体的接触を起こすことです。この言葉はかなり広い意味を含んでいて、上で挙げた「臨場感」「主体性」「偶然性」とも密接な関わりがありそうです。アバターを使った仮想空間でのイベントなどもいずれはやってみたいと思っています。

特別感
 そのイベントに参加した人だけが得られる体験です。アイドルのコンサートで終演後に行う握手会やツーショット撮影などが該当します。Zoomであれば、最後に全体集合写真を撮るのも良いかもしれません。

共振性
 そのイベントに参加した人たちが同時に共有する感覚です。

一回性
 個人的には身体性や偶然性といった観点でもヒントを与えれくれるのではないかと思っている「演劇」は、台詞や舞台演出は毎回同じなのに、全く同じものは一度しか観られません。これが「一回性」という魅力です。

 徒然なるままに書いてしまいましたが、他にも大事な要素があるかもしれません。

 うーむ…オンラインコミュニケーションは奥が深い。

 カミオカラボのオンラインツアーは皆さまにご参加頂ける機会も検討中です。

 それでは、今日はこの辺で!

スキありがとうございます!
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